「仕事を辞めたい」と思って検索すると、いろいろな情報が出てきます。
転職サイト、退職代行、キャリア相談、退職の手続き、自己分析。どれも必要そうに見えるんですが、情報が多すぎて、
「結局、何から始めたらいいんやろ……」
と、かえって分からなくなることもあります。
求人を見ても、転職したいのか自分でも分からない。退職について調べると、お金や保険、税金の話が出てきて不安になる。誰かに相談した方がよさそうだけど、転職や有料サービスを勧められるのも少し怖い。
僕も、仕事を辞めたいと思いながら3年以上働き続けました。その間に求人を探し、面接を受け、内定をいただいたこともあります。資格を取ろうとキャリアコンサルタントのスクールにも通いました。
それでも、次の仕事はなかなか決められず、退職するのをためらっていました。
当時の僕は、「仕事を辞めたいなら、次の転職先を見つけなければ」と考えていたんです。ただ今振り返ると、最初に必要だったのは転職先を決めることではなく、自分が何に困っていて、何が怖くて動けないのかを整理することだったんだと思います。
この記事では、仕事を辞めたいと思ったとき、最初にやっておきたいことを5つに分けて紹介します。
全部を一度にやる必要はありません。今の自分に必要そうなものを一つだけ選んで、分からないことを少し減らす。そのための入口として読んでもらえたら嬉しいです。
仕事を辞めたいと思っても、最初から「辞めるかどうか」を決めなくていい
仕事を辞めたいと思うと、頭の中が「辞めるか、残るか」の二択になりやすいです。
今すぐ辞める勇気はない。でも、このまま働き続けるのもしんどい。どちらも選べないまま、同じことを何度も考えてしまうことがあります。
ただ、
仕事を辞めたい、という気持ち = 今すぐ退職しなければならない
ということでもありません。
辞めたいという気持ちは、「今の働き方のどこかを変えたい」というサインとして捉えることもできます。仕事内容が合わないのかもしれませんし、上司や職場の人間関係がつらいのかもしれません。勤務時間や通勤で体力が削られている可能性もあれば、仕事そのものよりも評価のされ方や会社の方針に納得できないというケースもあります。
何がしんどいのかによって、考えられる対応は変わってきます。部署や勤務時間を変えれば続けられるのか、少し休む必要があるのか、今の会社を離れたいのか、それとも仕事そのものを変えたいのか。
最初から正しい答えを決めるのではなく、
確認したい3つの項目
- 何がしんどいのか
- 何が不安なのか
- 何が変われば続けられそうなのか
を確認するところから始めてもいいと思うんです。
僕自身、長い間「辞めたいのに、転職先を決められない」と悩んでいました。ただ、退職と転職を一つの決断として考えていたことも、動けなかった理由の一つだったように思います。
仕事を辞めたいとき、最初にやること5つ
| やること | 分かること |
|---|---|
| 1.しんどいことを書く | 自分が変えたい部分 |
| 2.辞めたら困ることを確認 | 動けない理由 |
| 3.生活費を計算する | 必要なお金 |
| 4.選択肢を並べる | 退職以外の道 |
| 5.相談先を決める | 誰に何を聞くか整理 |
1.「何がしんどいのか」を書き出す
最初にしてみてほしいのは、今の仕事でしんどいと感じていることを書き出すことです。
「会社が嫌」「仕事に行きたくない」。最初は、それだけでも構いません。ただ、そこからもう少しだけ分けてみると、自分が何を変えたいのか見えやすくなります。
たとえば、次のような項目です。
- 仕事内容
- 上司や同僚との人間関係
- 給料
- 労働時間や残業
- 休日
- 評価のされ方
- 通勤時間
- 会社の将来性
- 体力や体調
- 働く場所や働き方
僕の場合は、長時間労働や通勤がしんどかった会社もあれば、経営陣への不信感や評価基準が分からないことに悩んだ会社もありました。同じ「仕事を辞めたい」でも、原因は会社によって全然違ったんです。
原因が違えば、次に確認することも変わってきます。通勤がしんどいなら、在宅勤務や通勤時間の短い求人を見る方法がありますし、仕事内容は嫌いではないけれど上司との関係がつらいなら、異動や配置転換という選択肢が見つかるかもしれません。
もちろん、書き出しただけですぐ解決するとは限りませんし、ここで難しい自己分析を完成させる必要もありません。
まずは紙やスマートフォンのメモに、
「仕事内容が嫌」ではなく、「急な依頼が多く、予定どおりに進められない」のように、できる範囲で具体的に書くと、より整理しやすくなります。反対に、書こうとしても何も浮かばない場合は、「嫌だった出来事」をそのまま書いても構いません。
自分は何に反応したのか、何が積み重なっているのか。そこを知ることが、最初の材料になります。
2.「辞めたら困ること」を確認する
仕事を辞めたい理由だけでなく、辞めることへの不安も書き出してみます。
辞めたいのに動けないと、「自分には行動力がない」「覚悟が足りない」と考えてしまうことがあります。でも実際には、動けない理由は一つとは限りません。
- 収入がなくなる
- 家族に負担をかける
- 次の仕事が決まっていない
- 健康保険や年金がどうなるか分からない
- 税金をどれくらい払うのか分からない
- 転職しても同じことになりそう
- 年齢やブランクが気になる
- 会社や周囲へどう説明すればいいか分からない
こうした不安が重なっていれば、簡単に決められないのも無理はないと思います。
僕の場合、特に大きかったのは収入でした。
転職して給与が下がるかもしれない、その後に増える保証もない、家族に心配をかけるかもしれない。そう考えると、「もう少し我慢した方がいいのかな」と何度も思いました。
ここで大切なのは、
たとえば、「お金が不安」だけでは、何を調べればよいか分かりません。
しかし、
- 退職後の収入が分からない
- 毎月いくら必要か把握していない
- 健康保険や税金の負担が分からない
- 貯金で何か月生活できるか分からない
と分ければ、確認できることが見えてきます。
不安のなかには、今すぐ答えが出ないものもあります。次の仕事がいつ決まるかは事前には分かりませんし、次の会社の人間関係も、入社するまで見抜けない部分があります。
とはいえ、調べれば分かることと、今は分からないことを分けるだけでも、頭の中は少し整理しやすくなるはずです。
3.生活費とお金をざっくり計算する
辞めた後のお金が心配なら、毎月いくら必要なのかをざっくり計算してみます。
確認したいのは、次のようなことです。
- 毎月の生活費はいくらか
- 家賃やローンなどの固定費はいくらか
- 退職すると収入はどう変わるか
- 家族の収入はどのくらいあるか
- 貯金はいくら使えるか
- 収入が減った状態で何か月くらい生活できそうか

正確な将来予測を作る必要はありません。食費や光熱費は毎月変わりますし、退職後にどのくらいで次の収入を得られるかも分かりません。
ただ、何も分からないまま「辞めたら生活できなくなる」と考えるより、現在の支出を数字で確認した方が、案外考えやすくなるものです。
僕も、退職すると決めてから最初に生活費を計算しました。家賃、車などのローン、光熱費、通信費、保険料などを確認し、妻の収入や雇用保険の基本手当を含めて、毎月いくら不足するのか、貯金がどのくらい減っていきそうかを考えたんです。
計算したからといって、お金の不安が消えたわけではありません。それでも、退職した直後から生活できなくなるわけではなく、「少なくとも一定期間は考える時間を持てそうだ」と分かりました。漠然とした不安を数字に変えたことで、退職後の生活を少し具体的に考えられるようになったんです。
会社を辞めると、給与だけでなく、健康保険、年金、住民税などの扱いも変わります。雇用保険を受給できるかどうかや給付日数も、加入期間や離職理由などによって異なります。
※ネット上の情報だけで自分も同じだと判断せず、役所やハローワーク、年金事務所、加入している健康保険などの公式窓口で確認してください。
最初から制度をすべて理解しなくても構いません。まずは、
毎月最低限いくら必要か
だけでも確認してみてください。
4.「辞める」以外の選択肢も一度並べる
仕事を辞めたいと思ったときほど、退職以外の選択肢も一度並べてみます。
これは、退職を思いとどまるためではありません。最初から一つに絞らず、自分が比較できる選択肢を増やすためです。
たとえば、次のようなものがあります。
- 上司や会社へ相談する
- 部署や仕事内容を変える
- 勤務時間や働き方を変える
- 有給休暇や休職を確認する
- 求人を見る
- 転職活動を始める
- 副業や別の働き方を調べる
- キャリア相談を利用する
- 医療機関へ相談する
- 休職する
- 退職する

この中のどれが正しい、という話ではありません。会社によって使える制度は違いますし、職場に相談することでかえって状況が悪くなる心配がある人もいると思います。心身の状態によっては、働きながら選択肢を試す余裕がないこともあるでしょう。
大切なのは、「今すぐ退職するか、そのまま我慢するか」だけで考えないことです。求人を見るだけなら、転職を決めなくてもできますし、気になる働き方について調べるだけでも構いません。会社の就業規則を確認してみたら、休職制度があると分かるかもしれない。そういうこともあります。
実際に調べたり試したりして、「これは自分には合わない」と感じることもあります。でも、それも立派な判断材料になるんです。
僕も求人を探し、面接へ行き、内定をいただいたことがあります。それでも、転職を決められませんでした。
当時は「結局、何も変えられなかった」と感じていました。でも面接へ行ったからこそ、条件が合っていても社風や仕事の進め方に違和感があることや、次の職場で繰り返したくないことが少しずつ分かっていったんです。
選択肢を増やしすぎると、今度はどれを選べばいいか分からなくなることもあります。その場合は「やりたいこと」だけでなく、「これはやりたくない」「この条件は避けたい」という基準から減らしていく方法もあります。
5.一人で決めにくければ、相談先を決める
自分で書き出してみても同じところを回ってしまう場合は、誰かに話してみる方法もあります。
ただし、相談先は転職エージェントだけではありません。悩みの内容によって、相談しやすい相手は変わってきます。
| 相談したいこと | 相談先 |
|---|---|
| 気持ちを聞いてほしい | 家族や友人 |
| 今の職場で変えられることを知りたい | 上司や社内窓口 |
| 労働条件や制度について確認したい | 公的な相談窓口 |
| 心身の状態が気になる | 医療機関 |
| 今後の働き方を整理したい | キャリア相談 |
| 求人紹介や選考支援を受けたい | 転職エージェント |
家族に「辞めた方がいい」と言われても、すぐ退職できるとは限りませんし、キャリア相談を利用しても、その場で進路が決まるとは限らない。
ただ、自分の考えを声に出し、質問に答えるなかで気づくことがあるんです。
僕も妻や友人に何度も仕事の愚痴を話していました。ただ、気持ちを吐き出すことと、これからどうするかを整理することは、少し違いました。
何を相談したいのかが曖昧なままサービスを選ぶと、自分は気持ちを整理したかったのに、求人紹介の話が中心になることもあります。転職エージェントは、転職活動を具体的に進めたい人に向いています。一方、キャリア相談は、転職するかどうかも含めて、今後の働き方を整理したい場合に使いやすい相談先です。
まだ転職すると決めていないなら、いきなり転職サービスへ登録しなくても構いません。まずは家族に話す、無料の公的窓口を調べる、相談したいことをメモに書く。そこからでも始められます。
一人で何か月も同じことを考え続けている場合や、自分だけでは気持ちを言葉にできない場合は、第三者に話してみることも具体的な選択肢の一つです。
5つ全部を一気にやる必要はない
ここまで、仕事を辞めたいときに最初にやることを5つ紹介しました。でも、5つ全部を今日やる必要はありません。
仕事で疲れている状態で、自己分析をして、家計を計算して、制度を調べて、求人を見て、相談先まで探す。これを一度にやろうとすると、それだけでしんどくなってしまいます。
たとえば、次のように分けてもいいと思います。
- 今日今の仕事で嫌なことを3つ書く
「人間関係がしんどい」「残業が多い」など、きれいに整理しなくてOK。
まずは思いつくものを3つだけ書いてみる。 - 明日固定費を1つずつ確認する
家賃、スマホ代、保険料などから1つだけ。
全部計算するのではなく、「毎月これくらい必要なんだ」と一つ確認する。
次の日には、またひとつ。 - その次求人を1件だけ見る
応募しなくてOK。
給与、勤務時間、仕事内容などを見て、「今の会社以外にはどんな選択肢があるか」を知るだけでもいい。
求人を見たからといって、応募する必要はありません。家計を確認したからといって、退職日を決める必要もありませんし、相談先を調べても、すぐ申し込まなくて構いません。
僕自身、仕事を辞めたいと思ってから3年以上迷いました。
求人を探しても、面接へ行っても、スクールへ通っても、すぐ答えが出たわけではなかったんです。
今振り返ると、僕は何もしていなかったのではなく、その時点でできる範囲で出口を探していたんだと思います。行動が大きな決断につながらなくても、「これは違う」と分かることがある。それだけでも、次に考える範囲を少し狭められます。
体調がつらいときは「キャリア」より先に休むことも選択肢
仕事について考えられないほど体調がつらい場合は、転職先や今後のキャリアを整理する前に、休むことを考えてもいいと思います。
たとえば、
このような状態があるなら、一人で抱え込まず、医療機関などの専門家へ相談することも検討してみてください。
体調については、体験談だけで判断せず、医療機関などの専門家へ相談してください。
ここで「退職すれば解決する」「休めば元に戻る」とは言い切れません。必要な対応は、心身の状態や職場環境によって違います。
僕自身、退職を決めたあとにメンタルクリニックを受診し、双極性障害と診断されました。それまでは、自分から医療機関へ相談するという発想がなかったんです。
退職後になってから、休職や傷病手当金という選択肢を詳しく知りました。もし退職前に知っていれば、「そのまま働くか、辞めるか」だけでなく、「いったん休む」という方法も並べて考えていたと思います。
体調がつらいときまで、自分一人で今後の働き方を決める必要はありません。
医療機関のほか、働く人の心の健康や仕事の悩みについて相談できる、厚生労働省の「こころの耳」などの窓口もあります。
まとめ|まずは「辞めるか決める」より、分からないことを1つ減らす
仕事を辞めたいと思ったとき、最初にやることは、すぐ退職届を書くことでも、転職先を決めることでもありません。
まずは、次の5つから自分に必要なものを確認してみてください。
- 何がしんどいのかを書き出す
- 辞めたら困ることを確認する
- 生活費とお金をざっくり計算する
- 辞める以外の選択肢も一度並べる
- 一人で決めにくければ相談先を考える
全部やる必要はありません。仕事を辞めるかどうかも、今日決めなくて大丈夫です。
まずは紙やスマートフォンのメモを開いて、
今の仕事で嫌なことを3つだけ書く
そこから始めてみてください。書いてみると、今すぐ確認したいことが一つ見つかるかもしれません。辞めるかどうかは、そのメモを見ながら、あとで改めて考えてもいいと思います。








