「そんな会社、辞めた方がいいよ」
仕事の愚痴を話すたびに、妻や友人から何度も言われていました。
夕飯を食べながら、その日あった出来事をぽつぽつと話す。
妻は黙って聞いてくれたあと、決まって同じことを言いました。
「そんな会社、辞めた方がいいよ」
僕自身も、辞めたいと思っていました。
求人サイトに登録し、実際にいくつかの会社へ応募しました。
面接へ行き、内定が出たこともあります。
それでも、辞める決断ができませんでした。
辞めたいと思いながら、3年以上働き、
外から見れば、「そこまで嫌なら辞めればいい」と思うかもしれません。
でも当時の僕には、収入のこと、家族のこと、転職しても同じような気持ちになるかもしれない不安がありました。
動けなかったのは、何も考えていなかったからではありません。
むしろ、考えても答えが出ず、何度も同じ場所を行ったり来たりしていました。
求人サイトを開いては閉じ、履歴書のフォーマットを開いては下書きのまま保存する。
そんなことばかりしていました。
今回は、仕事を辞めたいと思いながら、何年も動けなかった頃のことを書いてみます。
1社目は3か月で辞められた
僕は、今まで一度も仕事を辞める決断ができなかったわけではありません。
1社目は、入社して3か月ほどで退職しました。
長時間労働に加えて、結果を強く求められる環境。
朝は満員電車で1時間以上かけて出勤し、帰りが終電になることがほとんどでした。
労働環境があまりに厳しく、寝る前に自分でも無意識のうちに涙が出ることもあり、続けるのは無理だと比較的早い段階で判断できました。
あのときは、辞める決断に迷いはありませんでした。
一方、2社目は違いました。
長く働くうちに任される仕事が増え、頼ってくれるお客さんもいました。
家族もいて、毎月の収入もあります。
嫌な部分があっても、すべてが嫌だったわけではありません。
辞めた後の生活を考えると、簡単には手放せませんでした。
2社目で強く辞めたいと思ったのは5年目頃だった
2社目で働き始めて5年ほど経った頃、会社に対する不信感が強くなっていきました。
その会社は家族経営で、社長と専務は兄弟でした。
社内にはリーダー会議のようなものがあり、僕たちも会社を良くするために時間をかけて意見を出していました。忙しい業務の合間に資料を作り、次の会議で提案する。
そんなことを何度も繰り返していました。
しかし、社長が納得しても専務が反対する。専務が納得しても社長が反対する。
どちらかの了承を得ても話が進まないことがあり、間にいる僕たちは振り回されているように感じていました。
「せっかく時間をかけて考えたのに、結局また振り出しに戻るのか」
そう思いながら会議室を出た日のことを、今でも覚えています。
外部のコンサルタントを入れ、「会社を良くしよう」と言われることもありました。
それでも僕には、経営側が本当に変わろうとしているようには見えませんでした。
「良くしろと言うわりに、この会社は良くなる気がないんじゃないか」
そう感じるようになり、少しずつモチベーションが下がっていきました。
評価される基準も分からなかった
会社への不信感は、意思決定の進め方だけではありませんでした。
明確な評価基準がなく、成果よりも社長に気に入られている人が出世しているように、僕には見えていました。
例えば、社長のゴルフや飲みの誘いに顔を出す人ほど、役職が上がっていくように感じていました。
一方で、現場でお客さんの信頼を積み重ねている人が、正当に評価されているとは思えませんでした。
経営陣は表では「従業員のことを考えている」と話します。
その一方で、裏では従業員への不満や文句を口にしていました。
もちろん、僕から見えていた範囲での話です。
それでも、表で言っていることと裏で話していることの違いを何度も見るうちに、経営陣の言葉を素直に受け取れなくなりました。
大きな出来事が一つあって、急に辞めたくなったわけではありません。
日々の小さな違和感が積み重なり、気がつけば「この会社で頑張り続けるのは難しい」と思うようになっていました。

それでも辞められなかった理由
一番の理由は、収入だった
会社への不満が大きくなっても、すぐには辞められませんでした。
一番の理由は、収入です。
今の仕事を辞めたら、毎月入ってきていた給与がなくなります。
クレジットカードの引き落とし日など、お金のことを考えると、それだけで気持ちが重くなりました。
転職して収入が下がる可能性もあります。その後に給与が増えるという約束もありません。
「転職したら収入が減るかもしれないし、その先で増える保証もないからな」
そんなことを何度も考えていました。
家族への心配もありました。
妻も同じように頑張って働いている。自分が辞めれば、負担や心配をかけてしまう。
だから、自分も我慢しなければならない。
当時は、そう言い聞かせていたところがあります。
今の会社が嫌だからといって、生活のことを無視して辞めるわけにはいきません。
「辞めたい」という気持ちと、「収入を失うのが怖い」という気持ちが、ずっと頭の中でぶつかっていました。
すべての時間が嫌だったわけではない
決断できなかった理由は、不安だけではありません。
働いていて、良かったと思える瞬間もありました。
お客さんから頼られたり、仕事をして喜んでもらえたりすると、「続けてきて良かった」と思うこともありました。
長年付き合いのあるお客さんから、
「あなたが担当でよかった」
と言ってもらえたことがあります。
何気ない一言でしたが、その一言のおかげで、しばらくは頑張れる気がしていました。
だからこそ、余計に迷ったのだと思います。
会社への不信感はある。
経営陣とは合わない。
でも、自分の仕事を必要としてくれる人もいる。
嫌なことしかなければ、もっと早く決められたのかもしれません。
良い部分も残っていたから、「もう少し続けられるかもしれない」と気持ちが揺れました。
仕事を辞めたい気持ちは、いつも同じ強さだったわけではありません。
嫌なことがあった日は、すぐにでも辞めたくなる。
お客さんから頼られた日は、もう少し頑張ろうと思う。
その繰り返しでした。
動けなかったけれど、何もしていなかったわけではない
辞めるまでに3年以上かかったと書くと、何もせず我慢し続けていたように見えるかもしれません。
実際には、僕なりに出口を探していました。
周囲に愚痴っていた
同僚や仲の良いお客さんに、会社への不満を話していました。
妻や友人にも、何度も愚痴を聞いてもらいました。
誰かに辞めた方がいいと言われても、収入や家族、次の職場への不安がなくなるわけではありません。
話を聞いてもらうと少し楽にはなりますが、退職を決められるかどうかは別の話でした。
話し終えたあと、少しすっきりした気持ちになりながらも、翌朝にはまた同じ不安が戻ってくる。
そんな感覚を、何度も味わいました。
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求人へ応募し、面接にも行った
求人サイトにも登録しました。
求人を眺めていただけではなく、いくつかの会社へ応募し、面接にも行きました。
内定が出た会社もあります。
それでも、転職先を決めきれませんでした。
当時は38歳。これまでの経験を生かしやすいと考え、同じ製造業を中心に探していました。
しかし、求人を見ていると、今の会社と似ているように感じる企業も多くありました。
面接で担当者の話を聞くうちに、「ここも似たような雰囲気かもしれない」と感じることが何度かありました。
条件が良さそうに見えても、実際に働いてみないと分からない部分は、どうしても残ります。
通勤時間、給与、休日など、条件が合わず応募できない求人も少なくありませんでした。
面接へ行っても、「今の会社を辞めてまで、ここへ行きたい」と思える決め手がない。
内定が出ても、本当に転職してよいのか判断できない。
今の会社に残りたいわけではないのに、次の会社にも進めない。そんな状態になっていました。
次の会社でも同じことになるのが怖かった理由は、こちらの記事にさらに詳しく書いています。
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選択肢を増やすためにスクールへ通った
今の経験だけでは、転職先の選択肢が少ないのかもしれない。
そう考えて、キャリアコンサルタントのスクールにも通いました。
休日や有休を使い、通学と課題に時間を充てる日々でした。
正直、体力的にも楽ではありませんでした。
資格を取れば、これまでとは違う仕事も選べるようになるかもしれないと思ったからです。
スクールへ通ったのも、僕なりに今の状況を変えようとした行動でした。
ただ、すぐに進む道が決まったわけではありません。
何か行動すれば、一気に迷いがなくなる。
当時はどこかでそう期待していたのかもしれません。
実際には、求人を探しても、面接へ行っても、スクールを修了しても、決断できない状態は続きました。
それでも今振り返ると、
退職を決められなかった時間を「何もしていなかった」とは思いません。
動けないなりに、自分なりの出口を探していたのだと思います。
会社での居場所がなくなり、退職を決めた
経営陣を避けるようになり、居場所がなくなった
会社への不信感が強くなるにつれて、僕は経営陣を避けるようになりました。
うまく関係を築こうとするより、できるだけ距離を取ろうとしていました。
その結果、関係はさらに悪くなっていきました。
それまでの部署とは関係のない雑用ばかりを任されるようになり、僕には一気に窓際へ追いやられたように感じられました。
会議にも呼ばれなくなり、これまで関わっていた仕事の情報も入ってこなくなりました。
会社の中に、自分の居場所がなくなっていく感覚がありました。
ちょうど会社には移転の予定がありました。
「移転する前には辞めよう」
そこでようやく、退職する時期を決めました。
退職届を出した日に「もう来なくていい」と言われた
退職を決め、会社へ退職届を提出しました。
すると、その日のうちに、
「残りの出勤日数分の給与は出すから、今日の昼から帰って、もう来なくていい」
と言われました。
正直、あっけない終わり方でした。

何年も悩み続けて、ようやく出した退職届でした。
それなのに、会社との関係は、たった数時間で片づけられてしまったように感じました。
9年近く働いた会社でしたが、退職届を出したその日が、実質的な最後の出勤日になりました。
強く辞めたいと思い始めてから、3年以上。
求人を探し、面接へ行き、スクールも修了しました。
それでも決めきれなかった時間は、いったんそこで終わりました。
退職したことは後悔していない
今振り返っても、退職したこと自体は後悔していません。
僕の場合は、最終的に退職以外の選択肢はなかったと思っています。
もっと人付き合いをうまくできていれば、違う結果になったのかもしれない。
そう考えることはあります。
ただ、自分だけが無理をして、居心地の悪い場所に残り続ければよかったとは思いません。
もちろん、「仕事が嫌なら、すぐ辞めた方がいい」と言いたいわけではありません。
収入や家族の生活を考えれば、すぐに決められないのは自然なことです。
今の仕事に良い部分が残っていれば、なおさら迷います。
ですが、メンタルクリニックを受診して双極性障害と診断され、
今の環境に居続けることで、さらに状態が悪化する可能性を指摘されました。
そこで「やはりこのままではいけない」と感じました。
少なくとも僕の場合は、自分がさらに壊れてしまう前に退職したことは、間違いではなかったと思っています。
心身の状態や必要な対応は人によって違うため、体調に不安がある場合は、僕の経験だけで判断せず医療機関へ相談してください。
無理を続けなければ成り立たない場所に、ずっと居続ける必要はないと僕は思っています。
辞めたいのに動けないときは、理由を分けてみる
仕事を辞めたいのに動けないと、「自分には行動力がない」「覚悟が足りない」と考えてしまうことがあります。
僕も、同じ場所で足踏みをしているような感覚がありました。
でも、動けない理由を分けてみると、単純に勇気だけの問題ではありませんでした。
- 収入がなくなるのが怖い。
- 家族へ負担をかけたくない。
- 転職しても同じことになるかもしれない。
- 今の仕事にも、捨てきれない良い部分がある。
- 次の職場に求める条件が、まだ決まっていない。
こうしたものが重なっていたから、決められなかったのだと思います。
すぐに辞めるか、我慢して残るか。
いきなりその2択を決めなくてもいいと思います。
まずは、

何が自分を今の会社につなぎ止めているんだろう・・・
と考えてみる。
収入なのか、家族なのか、次への不安なのか。
それが分かるだけでも、次に考えることが少し見えやすくなります。
まとめ|動けなかった時間も、何もしていなかったわけではない
僕は、仕事を辞めたいと強く思い始めてから、3年以上働き続けました。
収入がなくなることが怖かった。
家族に負担をかけたくなかった。
転職しても、また同じように悩むかもしれないと思っていた。
それでも、何もしていなかったわけではありません。
周囲に話し、求人を探し、面接へ行き、スクールにも通いました。
決断できないなりに、今の会社以外の道を探していました。
動けなかった時間を、すべて無駄だったとは思いません。
ただ、当時の僕は「何が不安で決められないのか」を、うまく分けられていませんでした。
仕事を辞めたいのに動けず、自分を責めているなら、まずは動けない理由を一つだけ言葉にしてみてもいいと思います。
退職するかどうかを決めるのは、その後でも遅くありません。
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